コアラの主食として、有名な植物「ユーカリ」。
コアラは実際このユーカリの葉しか食べず、水分もユーカリの葉から得る。(『コアラ』という名前はオーストラリア大陸の先住民アボリジニの言葉で『水を飲まない』という意味である。)
オーストラリア代表格の動物であり、愛らしいルックスのコアラの記事を期待した諸君、残念ながら今回スポットを当てるのはコアラではなく、そのエサとなる植物「ユーカリ」だ。
このユーカリにはコアラに負けないおもしろい要素がふんだんに含まれている。まずは、その身体の特徴から見てみよう。
常緑高木であるユーカリの葉はなんと『表裏の区別が無い』のである。
ふつう植物の葉にはツルツルして緑色の濃い「表面」とザラザラして緑色の薄い「裏面」という区別があるのだが、ユーカリの葉はその区別はなく両面は同じ見た目をしている。
また、『幹の外側の古い外皮は剥がれ落ちる』という性質を持つ。
これは乾燥地域であるオーストラリアで生きる術の一つで、なるべく新しい(若い)表皮を外部に露出させ、水蒸気から水分を効率よく得るためだと考えられる。
さらに、最終的に剥がれ土壌に落ちたその外皮は周りに生育する他の植物への日光を妨げ、成長を阻害する働きもあるのだ。
このユーカリの幹は木材としても非常に優秀で、オーストラリア中のほぼすべての電柱はこれでできている。橋にまで利用されることもある。
アロマオイルとしても有名なユーカリ。次はこのユーカリの葉のオイルについて見てみよう。
オーストラリアの人々は生活のあらゆるシーンでユーカリオイルを利用する。アロマ、薬用、消臭除菌はもちろん、洗濯・シミ抜きまで。
このように万能なオイルを含むユーカリの葉であるが、含油量は非常に多く、それにより我々の想像を遥かに超える現象が起こってしまう。
「風が吹けば山火事が起こる」
桶屋には申し訳ない。
風に揺れるユーカリの葉たち。それらの摩擦や日光の熱などと油分の多さが相まって時に、なんと発火。山林火災が起きてしまうのである。
さらにここで、このユーカリ発火を逆手に取り生き残る強者まで登場する。
ユーカリの周りに生えている「バンクシア」という樹木は、高温に反応して弾けて種子を飛ばすという驚異の生態を持つ。山火事により子孫を残すことができるのだ。
コアラちゃんやカンガルーくんが動物園でのんびり日向ぼっこでもしている間に、
オーストラリア大陸の人々はユーカリを有効活用し、
山林では人知れず恐るべき自然の生き残り合戦が繰り広げられているのである。
分類 | |
界 | 植物界 Plantae |
階級なし | 被子植物 angiosperms |
階級なし | 真正双子葉類 core eudicots |
階級なし | 真正双子葉類 eudicots |
階級なし | バラ上群 superrosids |
階級なし | バラ類 rosids |
階級なし | rosid II / Malvidae |
目 | フトモモ目 Myrtales |
科 | フトモモ科 Myrtaceae |
属 | ユーカリ属 Eucalyptus |
学名
Eucalyptus (L’Hér) |
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タイプ種
Eucalyptus obliqua |