【ランチュウ】かなしい金魚 〜イカ天バンド「たま」を聴きながら〜

「金魚」とは、コイ科フナ属に分類される魚であり、観賞魚としてはあまりにも有名。

 

その存在を知らない人は日本全国探しても、何処にもいないことだろう。

 

原産国は中国であり、「フナ(鮒)」の突然変異種である「ヒブナ(緋鮒)」から更なる突然変異あるいは人的な品種改良から、

 

「ワキン(和金)」

 

「リュウキン(琉金)」

 

「デメキン(出目金)」

 

「ピンポンパール」

 

「オランダ獅子頭」

 

「アズマニシキ(東錦)」

 

「タンチョウ(丹頂)」

 

など数多くの金魚が誕生し、今や日本のみならず世界中の人々に親しまれている。

 

金魚の誕生から今現在まで、その歴史はなんと1000年以上とも言われているのだ。

 

そんな途方も無く長い歴史の中で多くの品種が誕生し続けた金魚達であるが、中でも今回着目したい品種が『ランチュウ(蘭鋳)』である。

 

『ランチュウ』は我らが日本にて明治時代以降に誕生した品種のようだ。

 

その最大の特徴は、背ビレの無いずんぐりボディである。

 

本来、通常の金魚も含めて多くの魚類のヒレというのは、

 

えら蓋付近の胸ビレ

 

腹部の下に付く腹ビレ

 

肛門の後ろの尻ビレ

 

いわゆる魚のしっぽと呼ばれる尾ビレ

 

そして、背側に付いている背ビレ

 

 

という構成になっている。

 

だが、『ランチュウ』背ビレが元々無い改良品種である。

 

そして、魚類の背ビレというのは泳ぐ時の横揺れ(ぶれ)を保護し、旋回に役立つ部位とされる。

 

従って、『ランチュウ』魚のくせに水泳が苦手で、丸々した身体も相まって、ふらふらとなんとも魚らしからぬ泳ぎ方を見せるのである。

 

このふらふら・ゆらゆらと泳ぐ様が他の魚には無い優雅さを感じさせ、人々の心を掴み、大昔から今現在に至るまで、数ある金魚品種の中でも特に人気となっている。

 

※『ランチュウ』は水槽で飼うこともできるが、古くより水を張ったタライで飼い、上方向から魚体を観賞することが好まれる。

水槽で飼う場合は、前述の通り泳ぐことが不得意であるので、水深が深い環境では飼育が難しいとされ、高さの低い”ランチュウ用水槽”で飼うのが一般的。

 

『ランチュウ』の愛好家界隈では、品評会なども開かれ、ランクの高い(身体のバランス・色艶・泳ぎ方などが良い)個体は、数十万円の値が付く程、非常に高価で取引されている。

 

一つ断っておくと、筆者はそのレベルに至るような”ランチュウ愛好家”では決してない。

 

しかしながら、この『ランチュウ』において彼ら愛好家とはおそらく少し異なるであろう印象深い一つの想い”がある。

 

その想いを抱くこととなった超個人的なキッカケが、

 

「らんちう」

 

という曲である。

 

1990年にデビューした日本の伝説のバンド「たま」の一曲だ。(2003年解散)

 

「たま」は、90年代にTBSで放送されていた深夜番組「平成名物TV」の人気コーナー「三宅裕司のいかすバンド天国(通称:イカ天)」に出演し、一躍有名となったバンドである。

 

イカ天からは「BEGIN」「BLANKEY JET CITY(ブランキー・ジェット・シティ)」など、のちの有名バンドも輩出された。

 

その中でも特に異質で(良い意味で)、変態的(良い意味)だったバンドが「たま」だ。

 

メンバーの風貌もさることながら、非常にクセのある曲の数々は聴けば聴くほどとても魅惑的に感じる。

 

代表曲「さよなら人類」は、当時の人間でなくとも、一度は耳にしたことがあるかもしれない。

 

どうでも良いが、筆者が「たま」で最も好きなのは「満月小唄」という曲で、2位は「かなしいずぼん」という曲だ。

 

興味ある方は、是非一度検索していただきたく思う。

 

そんな多くの名曲の中でも、注目したいのが前述した通り「らんちう」である。

 

この曲名はまさに金魚の『ランチュウ』のことを指しており、その歌詞の一部を抜粋させていただくと、

 

魚で一番かなしい金魚

金魚で一番かなしいらんちう

(中略)

背びれの無い魚が……

出典:知久寿焼「らんちう」

 

とある。

 

筆者は高校〜大学時代に軽音楽(バンド演奏)を少々かじっていたのだが、その当時、この音源・歌詞を聴きながら、背ビレが無くふらふらと泳ぐランチュウのことを想ってみたことがある。

 

すると、なんとも“形容し難い悲しさ”が押し寄せてきたのである。

 

人間の勝手な都合により、背ビレを失った金魚。

 

魚なのに、泳ぎが下手な品種とされてしまったランチュウ。

 

そんな『ランチュウ』には申し訳ないのだが、この「たま」の曲と『ランチュウ』が泳ぐ様は非常によくマッチし、元々の優雅さにプラスして、ノスタルジックな物悲しさが感じられるのだ。

 

 

是非皆さんも、優雅な『ランチュウ』飼育を検討してみて欲しい。

 

夏の夕涼みに、泳いでいる金魚の姿はなんとも風流であろう。

 

もちろん、その際に「たま」の音楽を添えるのを忘れずに。

 

分類
動物界 Animalia
脊索動物門 Chordata
亜門 脊椎動物亜門 Vertebrata
条鰭綱 Actinopterygii
上目 骨鰾上目 Ostariophysi
コイ目 Cypriniformes
コイ科 Cyprinidae
亜科 コイ亜科 Cyprininae
フナ属 Carassius
キンギョ Carassius auratus
学名

Carassius auratus

(Linnaeus, 1758)

和名

キンギョ

英名

Goldfish