「カブトエビ」という生命をご存知であろうか?
「カブトガニ」は知名度は高いが、「カブトエビ」には馴染みのない方も多いだろう。
カブトエビは、「エビ」と同じ甲殻類に属するが、どちらかと言えば「ミジンコ」などが近縁と言える。
ちなみにカブトガニとも種類も大きさも全く異なる。
カブトエビの種類は、ジュラ紀の化石も発見されており、「生きている化石」の1つに数えられる。
頭部の真ん中に1つの眼(ノープリウス眼と呼ばれる)とその両脇に2つの眼を持ち、合計3つの眼を持つ。
このノープリウス眼が大人になっても残ることも、原始的生物の特徴だと言われている。
体長は種類や環境によっても異なるだろうが、およそ4〜7cmほど。
日本の田園にも生息する彼らカブトエビは、孵化後1〜2ヵ月という短い一生を過ごす。
新たな卵は泥中に産むのだが、注目すべきはこの卵の『耐乾性』だ。
実際、筆者は小学生の頃、友人達に誘われ近所の水田でカブトエビを数匹採取し、自宅で飼育することにした。
だが、案の定、短命のためすぐに全滅した。
その飼育容器と底泥は「明日片付けるからー」とか親に言い訳しつつ、めんどくさくなって結局そのままにしてしまった。
もちろん、泥はいつしか干上がりカピカピに。
明日やろうは馬鹿野郎!
その存在すら忘れ、遊び呆けていた約1年後のある日のこと。
庭いじりをしていた筆者の父親が、
「おーい、来てみろー!」と呼んだので行ってみると、
去年の『干上がった泥ごと放置されていた飼育容器』にはたくさんのカブトエビの赤ちゃんが泳いでいるではないかッ!
どうやら去年の生体が卵を泥中に残していて、耐乾性に優れた卵は1年の間休眠し、何かのタイミングで雨水等がこの容器に溜まり、孵化したようだ。
この時ばかりは父親と驚き・喜んだ。
ネットも普及していなかったこの時代、近所の図書館でカブトエビに関する本を探してまでして熱心に調べたのを微かに覚えている。
この乾燥に強い卵の性質を利用し、ホームセンターやおもちゃ売り場では、「トリオップス」などの名称で、
自由研究用の観察キット
が売られている。水に乾燥した卵を入れて待つだけで飼育スタートができる。
カブトエビの多数の手足をワラワラ動かしながら、泳ぐ様子には気持ち悪いと感じる方も多いとは思うが、
筆者はそんな、
メカニカルかつ古代の雰囲気を感じるボディに魅せられる。
夕暮れまで、生き物採集に明け暮れていたあの頃のオレンジ色の記憶に思いを馳せつつ、この話は終わる。
分類 | |
界 | 動物界 Animalia |
門 | 節足動物門 Arthropoda |
亜門 | 甲殻亜門 Crustacea |
網 | 鰓脚綱 Branchiopoda |
亜網 | カブトエビ亜綱 Calmanostraca |
目 | 背甲目 Notostraca |
亜目 | 潜頸亜目 Cryptodira |
科 | カブトエビ科 Triopsidae |
英名
tadpole shrimp |
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属
カブトエビ属 Triops Lepidurus 属 |