『匂い・臭い・におい』とは、
空気中を漂ってきて、嗅覚を刺激するもの
である。
『におい』は、我々動物の鼻を刺激して、
リラックスさせたり、
不快にさせたり、
集中力をUPさせたり、
興奮させたりする。
“味覚(美味しい・不味い)”も“嗅覚”が存在してこそ成立する。
時に、懐かしい思い出すら、黄泉がえらせることもある。
我々動物にとって、『におい』とは生きていく上で不可欠なものと言えよう。
そんな様々な『におい』を思う存分堪能できるイベントが存在する。
それが、
『におい展』
日本各地の都市で期間限定で開かれるそれは、
美臭から激臭まで『におい』を嗅ぐことができる珍妙(良い意味で)かつ変態的(良い意味で)な企画展
である。
こちらも変態的(良い意味で)な筆者は2019年の某日、某市内で開かれたこの『におい展』へ足を運んだ。
笑顔のスタッフに入場料を支払い、早速入場。
この『におい展』は、
◇華やかな良いにおい(様々な花の香りや香水のにおい)
◆危険なくさいにおい(それぞれ密閉されたボックスに入っており、におい臭いレベルが5段階で記してある)
に大きく分けられている。
なお、全てのにおいは紹介しきれないので、今回は特に印象深かったくさい臭い(激臭)の方についてお話ししようと思う。
◆激臭レベル2 ★★☆☆☆ 『くさや』
『くさや』とは、ムロアジやトビウオ、シイラなどの”開き”を「くさや液(クサヤ菌を含む汁)」という発酵液に漬け、それを”天日干し”にした食品である。
一般的に「銀杏」に近い香りと言われるが、個人的には「金魚のエサ(人工飼料)」のにおいの”凶悪版”に感じた。
好みは分かれるだろうが、この味は一度知ると病みつきになるようで、特に”酒飲み”にはたまらない代物である。
◆激臭レベル3 ★★★☆☆ 『ドリアン』
言わずと知れた「果物の王様」。
とにかくボックスを開けた瞬間凄まじい「腐敗臭」。
しかしそこで屈せず、それを乗り越えた先に少しフルーティな香りが待っている。
総合すると、95%が生ゴミ臭、残り5%がフルーティな甘いにおいである。
この5%の究極の味にたどり着けた者だけがこのフルーツの感動的な美味しさを感じることができるのであろう(多分)。
◆激臭レベル3 ★★★☆☆ 『加齢臭』
非常に形容し難いこの香りは、いわゆる「おっさん臭」である。
今回展示の加齢臭は人工合成(再現)されたもの。
どこかのおっさんから借りてきたものではないようだ。
個人的に、”くさい”というよりは”自分が幼少の頃の父親の服のにおい”に近いと感じた。
どこかしら”懐かしい”という感じだ。
実は、30代男性である筆者もそろそろこの香りが、、、?!
体臭ケアに気を配らねばと改めて思った今日この頃であった。
◆激臭レベル4 ★★★★☆ 『足のにおい』
個人的にはこれの再現度(上記の加齢臭もそうであるようにこれも本物ではなく、合成されたにおいらしい)がいかほどのものかと期待していた笑のだが、生乾き臭に近いにおいがするだけで、筆者も含めリアルなおっさんの蒸れた最高潮の靴下のにおいとは遥かに程遠かった。
この展示を作った調合師(?)の方は「おっさんの足の真のクサさ」を舐め過ぎである。
◆激臭レベル4 ★★★★☆ 『臭豆腐』
『臭豆腐(しゅうどうふ)』とは、豆腐を”植物性の発酵液”に漬けた、中華人民共和国原産の加工食品である。
“インドール”と呼ばれるにおい成分などにより、強烈な「刺激臭(糞便臭)」を有する。
非常に強烈な風味ではあるが、最後には”チーズのような深い風味”に出逢えるらしい。
ちなみに筆者はかなり昔に本場の中国にてこのにおいを既に”経験済み”であり、今回の展示ではその”耐性”を発揮し、なんとか乗り越えることができた(笑)
◆激臭レベル5 ★★★★★ MAX!
『シュールストレミング』
今回の目玉である『シュールストレミング』はスウェーデンで作られる”ニシン(魚)の塩漬け”を”缶詰”にしたもので、「世界一くさい食べ物」として有名である。
そのにおいは、一言で表すと「腐った魚や生ゴミのにおい」(笑)
イメージできる人も多いとは思うが、”魚由来の腐敗臭”は何よりも”強烈”なのだ。
流石、”激臭レベルMAX”である。
『何故わざわざそんなくさいものを食べるのか?』
『そんなの食べなきゃいいし、作らなきゃいいじゃん!』
という声が聞こえてきそうであるが、この塩漬け・発酵により長期間保存できる『シュールストレミング(ニシン)』は、中世ヨーロッパの人々にとって生き延びるための”貴重な糧食”であったのだ。
追記であるが、この『シュールストレミング』の缶詰の中には発酵による”ガス(CO2 等)”が充満しているのだが、2014年のノルウェーのとある小屋にて、25年もの長期間放置された缶詰が発見され、なんと!この処理に「缶詰専門家(そんな人いるの?笑)」と「爆発物処理班」が出動するという騒ぎになったようだ。
「生き延びるための保存食」と「爆発物処理班が絡む程の危険物」という”矛盾”に、何故だか趣深く感じる筆者であった。
とまぁ、このように“美臭から激臭”まで心ゆくまで色々なにおいを体験できる『におい展』であったが、個人的に非常に満足いく内容であった。
展示のクオリティも高いものが多かった。
『足のにおい』ではおっさんの足の模型が靴下を履いていたり、それぞれのにおいにしっかり解説(科学的・歴史的な)が付いていたり。
このイベント企画チームの“情熱”が十分に感じ取ることができた。
どうやら、噂によると『におい展』の続編の企画が進行中だとか。。。
興味ある諸君は、筆者とともに心待ちにしておこう。