ここは、両生類の世界。
登場人物は、カエルくん、イモリちゃん、そしてメキシコサラマンダーくんの3人。
彼らが「子供」から「大人」への階段をのぼっていく様子を見てみよう。
❶カエルくんの場合
おたまじゃくし姿の幼少期、田舎の池の中にある幼稚園に入園。元気いっぱいわんぱくな彼は、羽目を外すことも多々あり、先生に叱られることはしょっちゅうであった。
小・中学校、高校と進学。相変わらず先生の手を焼かせつつも、少しずつ「自制心」と「能動的姿勢」を身に付けていく。この頃から、手足が生え始めてくる。
教員を志し、大学の教育学部に入学。自身が教員となり、これまで迷惑をかけた学校の先生に恩返しをするという意味もあった。もう手足は生え揃い、尾(しっぽ)は徐々に退化していった。
そして、、、念願の教員となった「カエルくん」は水中から初めて陸地へ上がり、「カエル先生」として、過去の自分と同じようなわんぱくな子供たちのために、あちらこちらピョンピョン跳び回りながら、教鞭をとっている。
❷イモリちゃんの場合
近所でも可愛らしいと評判のおたまじゃくし姿の「イモリちゃん」は保育園に入園。健気で大人しい性格の彼女は誰もが守ってあげたくなるような女の子だった。
小・中学校、そして女子高へ進学。愛らしいルックスと小川を泳ぐ可憐な姿は、周囲の男子イモリたちの目を釘付けにするほどだった。美しい手足が少しずつ生え始める。
名門大学の文学部へ進学。在学中に、処女作「イモリは何見て舞い泳ぐ」を執筆し、小説家デビュー。手足が生え揃い、尾は退化せず残った。
第2作目「クライング・サラマンダー」は大ヒットを記録。そして、、、あの幼かった「イモリちゃん」は初めて水から陸へ上がり、身に付けた肺呼吸を駆使しつつ、「体に美しい朱色の模様を持つ人気作家 イモリ」として、新作の執筆に専念している。
❸メキシコサラマンダーくんの場合
メキシコで生を受けたおたまじゃくし姿の「メキシコサラマンダーくん」は、とある湖の中の保育園に入園。甘えん坊な彼は、両親の愛情を受けて、不自由なくすくすく育った。
小学校の低学年の頃、日本の学校に転校することとなった。珍しい「海外からの転校生」ということで、周囲からはもてはやされ、一躍人気者に。
日本では「ウーパールーパーくん」という愛称で親しまれた。文化の違いに戸惑いつつも、人気者として、また、相変わらず不自由なく暮らしていく。欲しいと思ったエサはいつだって誰かが差し入れてくれたのだ。
そして、、、手足を生やし水底を自分で歩けるようになった。そう、水の世界から飛び出し陸地への一歩を踏み出す時が来たのだ。しかし、、、彼は、
「大人になんかなりたくない!」
と言い残し、水底へと帰って行った。結局「ウーパールーパーくん」は「ウーパールーパーくん」のまま「外は怖い、、水の中が安心なんだ、、。」とかブツブツ言いながら、二度と大地を踏むことは無かった。
茶番劇のようなストーリーに付き合っていただき、まず感謝を述べよう(笑)もちろんフィクションである。
しかし、この茶番のお話の中には特筆すべき1つの事実が存在する。
それはウーパールーパーくんが言い放った「大人になんかなりたくない!」の台詞である。
そう、ウーパールーパーこと「メキシコサラマンダー」は両生類のくせに、
『変態』
※生物学上、一生涯でえら呼吸の幼生(おたまじゃくし)→成体(手足が生え、陸上へ)という変化を経ること
を行わないのだ。
彼の生育環境では、ヨウ素が少ないなどの理由で「チロキシン」という変態に必要なホルモンが合成できないのである。
水中と陸上を両方生きるから『両生類』。
彼は「そんなの勝手に人間が決めたことだろ、、ボソボソ、、」と言わんばかりにそれを無視し、イレギュラーな存在となった。
そんな彼の態度を見た、超サディスティックな人間たちの一部は、
「無理矢理にでも変態させてみせる!」
などと訳の分からない意欲と情熱に燃え、
水槽内の水位低下、チロキシン投与などの荒業により、
遂に『メキシコサラマンダーの変態』を成功させたのであった。
ちなみに以前、筆者は一度ネット上で「ウーパールーパー 変態」で画像検索したことがあるが、元の可愛らしい見た目からはかけ離れた変態後のなんとも言い難い彼の姿がそこにはあった。
勇気ある方は是非。
どう感じるかは人それぞれ。
判断はお任せする。
分類 | |
界 | 動物界 Animalia |
門 | 脊索動物門 Chordata |
亜門 | 脊椎動物亜門 Vertebrata |
網 | 両生綱 Amphibia |
目 | 有尾目 Caudata/Urodela |
科 | トラフサンショウウオ科 Ambystomatidae |
属 | トラフサンショウウオ属 Ambystoma |
種 | メキシコサンショウウオ A. mexicanum |
学名
Ambystoma mexicanum (Shaw & Nodder, 1789) |
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和名
メキシコサンショウウオ |
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英名
Axolotl |