「モスキート音」という言葉をご存知であろうか?
17キロヘルツ前後の高周波音のことで、「ピィーン」という非常に細い音を指す。
これは一般的に若い人ほど聞き取ることのできる確率が高いもので、歳をとるにつれ聞き取りづらくなっていく。
個人差はあれど、モスキート音は非常に耳障りに感じる人が多い。
まるで、夏の夜中睡眠を妨げるあの「蚊の羽音」のように。
そう、「モスキート」とはまさに「蚊(カ)」を意味する英語なのだ。
今回は、この「蚊(カ)」のお話。存分にかゆくなっていただこう。
世界におよそ3000種ほど存在する蚊は、我々にとっても最もポピュラーな吸血動物であろう。
しかし、吸血行動をする蚊は、実は産卵前のメスだけ。オスは吸わない。このメスの吸血の仕組みが驚愕だ。
まず我々動物から発せられる熱(体温)や匂い、CO2ガスをレーダーの如く感知し、ターゲットを絞る。
※肥満体型のヒトが刺されやすいとよく言われるのは汗をかきやすく、このレーダーの対象となりやすいため。
無事ターゲットの皮膚に着陸したら、いよいよ口吻(こうふん)を突き刺すわけだが、この蚊の口吻の構造が恐ろしく巧妙である。
例えるならば、それは「万能マルチツール」!
①表皮を切り裂くノコギリ
②肉を切るカッターナイフ
③毛細血管を探るセンサー
④血液を吸い上げるストロー
なんと!これら複数の口が一本にまとめられているのだ。
しかも、吸血と同時に、
「血液凝固防止剤(外部に出た血液が固まるのを防ぐもの)」
「局部麻酔薬(蚊に刺されているのを分かりづらくするもので、数分間効果が持続する)」
を血管に注入する。
よく、蚊に刺されていることに気が付かず、後でかゆくなってくるのはこの麻酔薬のためだ。まるで天才外科医である。
このようにハイテクな機能を用いて、彼らは1回の吸血で自身の体重と同じ4~5mgの血液を吸う。
なぜ奴らは、我々の血を狙うのか?その答えは、「血液の組成」にある。
我らの血液は主に、
◇赤血球(酸素運搬を担う赤い細胞)
◇白血球(免疫を司る細胞)
◇血小板(止血作用を持つ細胞)
◇血しょう(水分とタンパク質から成る液体)
から成っている。
奴らの狙いはこの中の「血しょう」。
正確に言うと、血しょう中の「タンパク質」だ。この含有量が蚊にとっては多く、栄養満点なのだ。
いわば血液は、蚊のレッド◯ル並みの「エナジードリンク」!
この栄養を蚊のメスは身体に蓄え、産卵。後世に望みを繋いでゆくのだ。
今年の夏も来年の夏も、奴らはハイテクツールを携えて、きっと貴方の手足を目がけ襲来するだろう。
分類 | |
界 | 動物界 Animalia |
門 | 節足動物門 Arthropoda |
網 | 昆虫綱 Insecta |
目 | ハエ目(双翅目) Diptera |
亜目 | カ亜目(長角亜目、糸角亜目) Nematocera |
下目 | カ下目 Culicomorpha |
上科 | カ上科 Culicoidea |
科 | カ科 Culicidae |
学名
Culicidae (Meigen, 1818) |
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英名
mosquito |
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亜科
オオカ亜科 Toxorhynchitinae ナミカ亜科 Culicinae ハマダラカ亜科 Anophelinae |