『家守』
人家を守りし爬虫類。
昔から日本において、「ヤモリ」と言えば基本的にこの『二ホンヤモリ』を指す。
上記で“家を守る爬虫類”と書いたがこれは、
人間への危害は及ぼさず、家の中の害虫(クモやゴキブリなど)を捕食してくれる
ことが由来の1つである。
夏の夜、人家の明かりに集まるガなどの羽虫をターゲット(エサ)にした『ヤモリ』が“網戸や窓ガラスにへばりついている姿”は、日本人ならば一度は目にしたことがあるだろう。
ところで、彼らのこの「へばりついてどんな面(凸凹面やツルツルした面)でも軽快に移動できる能力」の“仕組み”を読者の皆さんはご存じであろうか。
突然であるが、以下の3択から考えてみて欲しい。
A. ”カタツムリ”がコンクリート面をはっていくような『粘液』によるもの
B. ”タコ”の足のような『吸盤』によるもの
C. ”ネコ”が木に登る時のような『爪』のひっかけによるもの
さて、皆さんはどれを選んでいただいただろうか?
それでは、正解発表ッ!
なんと!実は上記のA~Cはいずれも正解では無い。
(ごめんなさいッ!笑)
では、『ヤモリ』の“壁を自由に登る”、”壁にくっつく”という仕組みは何か?
それは、
「分子間力」の一種である『ファンデルワールス力(りょく)』
という、いかにもサイエンスちっくなパワーである。
『ヤモリ』の足指の裏には、非常に多くの細かな「剛毛」という突起が生えている。
さらにこの剛毛は細かく無数に分岐している。
『ヤモリ』の足裏を「趾下薄板(しかはくばん)」と呼び、そこにこの”ミクロな構造”が存在するわけだ。
この無数の突起が、壁やガラス表面(ツルツルしたガラス面にも微細なレベルで見ると凹凸がある)に噛み合うと、上記に述べた『ファンデルワールス力』(原子の周りを飛ぶ「電子」が生み出す”磁場”によって周りの原子(電子)が引き寄せられる力)が生じて、くっつくことができるのである。
しかも、この『ヤモリくん』は、
剛毛の角度をわずかに変化させ、『ファンデルワールス力』を自由にコントロール(くっつく力の強弱調整)し、足裏を面からはがしたり、またくっつけたりできる
のだという(汗)
あんなつぶらな瞳をした彼らだが、こんなハイテクなボディを有しているとは驚愕だッ!
この『ヤモリ』のテクノロジーを我々人類は解析し、ロボット工学(”危険”で”複雑”な場所において”レスキュー活動”ができるロボットを開発)などに応用しようと日夜研究に励んでいる。
科学史を変えるかもしれない程の「スーパーサイエンス」を己の「足裏」に秘めていると知ってか知らずか、彼ら『二ホンヤモリ』は今年の夏も我々の家の窓に”チョロチョロ”っと現れることだろう。
分類 | |
界 | 動物界 Animalia |
門 | 脊索動物門 Chordata |
亜門 | 脊椎動物亜門 Vertebrata |
網 | 爬虫綱 Reptilia |
目 | 有鱗目 Squamata |
科 | ヤモリ科 Gekkonidae |
属 | ヤモリ属 Gekko |
種 | ニホンヤモリ G. japonicus |
学名
Gekko japonicus (Blyth, 1854) |
|
和名
ニホンヤモリ |
|
英名
Schlegel’s Japanese gecko |