『睡蓮(スイレン)』とは、日本にも自生する水生植物の仲間である。
では、この『睡蓮(スイレン)』という名の語源をご存知であろうか?
スイレンの白い花は7・8月頃、朝開花して、その日の夕方には閉じてしまう。
1つの花は、これを3日ほど繰り返す。
「日の出ている間のみ花が開き、日が沈むと睡(ねむ)るように閉じる蓮(ハス)のような植物」
から「睡蓮」となったと言われている。
『睡れる池の美女』と言えよう。
ところで、睡蓮(スイレン)と蓮(ハス)の違いは何なのか?
「どちらも池や沼に浮かんでいる同じような植物でしょ?」
という人もいるかもしれない。
彼女らは同じ水生植物であるが、
スイレンはスイレン科、ハスはハス科と分かれており、その詳細な違いは以下の通り。
スイレンの特徴
◇葉の形:切れ込みのある丸い葉
◇葉の所在:水面に浮かぶ位置
◇花の所在:水面に浮かぶ位置(特に温帯性スイレンの場合)
◇食用:一部の例を除き食用とならない
【浮葉植物】
ハスの特徴
◇葉の形:切れ込みの無い丸い葉
◇葉の所在:水面に浮かぶもの(浮き葉)+水面より上に伸びるもの(立ち葉)
◇花の所在:水面より上の位置
◇食用:地下茎は食用(レンコン)
【抽水植物】
特徴的なスイレンの葉の驚くべき生き抜く知恵を掘り下げてみよう。
そもそも植物は『気孔(きこう)』という「酸素やCO2、水蒸気などのガス交換のための穴」を主に葉の裏側に多く持っているのだが、
スイレンの気孔は、葉の表側に多く点在している。
水面から出ている表側でないとガス交換ができないのだ。
また、スイレンの葉の切れ込みは、自生している池や沼の水位が上昇する際に、この切れ込みから水が葉の上に溢れ、その水の重さで程よく葉を沈ませる為にある。
これにより、水面上昇とともに葉や茎を引っ張る上方向の力を和らげ、それによる植物体へのダメージを緩和することができるのだ。
「水中に葉が沈んだら、酸素を取り込めないんじゃない?!大丈夫?」
と心配してくれた読者の皆さん。
どうか安心していただきたい。
スイレンの葉は万が一、水中に沈んでしまっても、茎を伸ばし、数十時間後には水面に出るくらいの急生長が可能なのだ。
仮に、水中で葉が裏返ってしまっても、気孔を備える表側を水面出そうと数時間後にはくるんと元に戻ることもできる。
このように、『睡れる池の美女』は賢く、たくましく水面で生き抜いているのだ。
筆者は、他の植物に比べ、水生植物に何故か昔から魅せられる。
水面(みなも)に映る彼女らの美しさと儚さが感じられるからなのかもしれない。
このサイトでは、同じ水生植物の「カキツバタ」の記事も書いている。
気になる方は、是非そちらもご覧いただきたい。
分類 | |
界 | 植物界 Plantae |
階級なし | 被子植物 Angiosperms |
目 | スイレン目 Nymphaeales |
科 | スイレン科 Nymphaeaceae |
属 | スイレン属 Nymphaea |