標準和名『アカムツ』は、スズキ目スズキ亜目ホタルジャコ科アカムツ属に分類される海水魚であり、食用にされる。
名の通り、赤いボディを持つお魚だ。
体長は大きいもので40cm程度であるが、スーパーなどで一般に並ぶものは20cm前後である。
『アカムツ』よりも、日本海側での呼び名『ノドグロ(喉黒)』の方がよく知られているかもしれない。
地域によっては、「キンギョ」「メキン」などと呼ばれることも。
近年、高級魚として有名であり、煮付け、汁物、干物などは至極美味であり、都会では超高級魚。
さて、そんな彼ら『アカムツ』は、水深100〜200mに生息している。
深海の定義は明確にはないのだが、普通“水深200mより深い海”とされる。
よって、『アカムツ』は完全なる深海魚とは言い難いが、深海付近を泳いでいる魚と言えよう。
そして、『ノドグロ』という別名であるが、それは彼らの“口内(のど)が黒い膜で覆われていること”に由来する。
のどが黒いから『ノドグロ』。
では、『ノドグロ』の のどは“なぜ黒いのか?”という1つの素朴な疑問が湧いてくることだろう。
もし口内が白色〜透けるような色だったのならどうだろうか。ここではこの仮の魚を『ノドジロ(喉白)』と呼ぶことにする。
『ノドジロ』は今、空腹でありエサを求めている。
深海には“発光する生き物やプランクトン”が多く存在するのだが、それらを『ノドジロ』は捕食する。
口の中に入ったそれらの発する光は、『ノドジロ』の のどが白〜透明色であるが故、外に漏れ出すことだろう。それも暗い暗い深海で。
そうなれば、周りの捕食者に対して、まるで
『わたくし、ノドジロはここに居ますよー!』
『わたくしを食べたい方は是非コチラへどーぞッ!!』
と大声で猛アピールしているようなものだ。
つまり、『ノドジロ』の捕食は非常にデンジャーな行動となってしまう。
これが『ノドグロ』の場合、光を吸収しやすい黒色の内膜をのどに持つので、外部へ光が漏れ出しにくい、すなわち、天敵からも気付かれにくいというわけだ。
『アカムツ』の祖先は、大昔きっとこの理屈に気付いたのだろう。
だから、彼らは『ノドジロ(喉白)』ではなく、『ノドグロ(喉黒)』として生きていこうと決めたのだろう。
※ちなみに深海には、同様の考え方で『アカムツ』以外にものどが黒いお魚が多く存在する。
諸君がもし今度、高級魚『ノドグロ』を食す機会があれば、箸をつける前に“のどの黒色”をよく観察してみて欲しい。
彼らの“生き抜く為の知恵”とその“DNA”に思いを馳せながら。
分類 | |
界 | 動物界 Animalia |
門 | 脊索動物門 Chordata |
亜門 | 脊椎動物亜門 Vertebrata |
網 | 条鰭綱 Actinopterygii |
目 | スズキ目 Perciformes |
亜目 | スズキ亜目 Percoidei |
科 | ホタルジャコ科 Acropomatidae |
属 | アカムツ属 Doederleinia |
種 | アカムツ D. berycoides |
学名
Doederleinia berycoides (Hilgendorf, 1879) |
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英名
Rosy seabass |