四六時中、逆さまに泳ぐ小さなナマズ(身体は5cmほど)がいる。
分布は、中央アフリカのコンゴ川流域。
日本の熱帯魚ショップでも購入可能。
人は彼に、
「サカサナマズ」
と小3男子が付けそうな安易かつストレートな名前を授けた。
しかし、本当にサカサナマズは腹を上、背を下にした文字通り逆さまな状態が常なのだ。
泳ぐときももちろん逆さま。
隠れるときも逆さま。
餌を食べるのも逆さま。
しまいには無重力状態でも逆さまなのだそうだ。
もはや背泳ぎのチャンピオンだ。
「なぜ逆さまに泳ぐのか?」
これに関しては、未だ学術的にはよく分かっていない。
一般的に魚類の腹(下)は白っぽく、背(上)は黒っぽい色になっていることが多い。
これには端的に言うと「保護色」の役目がある。
腹側が白いことで、
下から見た捕食者にとっては、太陽光にターゲットの白い腹が入り交じり『見にくい』
逆に背側が黒っぽいことで、
ヒトを含む上から視点の天敵にとっては、水面の濃い色と魚影が交じり、これまた『見にくい』
たかが魚体の配色1つとってみても理にかなっているのだ。
逆さに泳ぐサカサナマズは、この配色もなんと逆さまになる。
つまり、
腹(下)は黒っぽい色で、背(上)はどちらかというと白っぽい色
をしているのだ。
このように逆さまに泳ぐこの魚は、
「珍しい魚」「ヘンテコな魚」
と周りから着目されるわけであるが、
ここで、喋れないサカサナマズに代わって筆者が代弁しよう。
『僕らサカサナマズにとっては、腹を上向きに、背を下向きに泳ぐことが常識なんだよ。』
『だから、そんな常識外れのような目で僕らを見ないで欲しいんだ。』
『むしろ僕らにとっては、他の魚たちの泳ぎ方の方が非常識だ。ほんと変な泳ぎ方っ!』
『腹を下、背を上で泳ぐのが普通って誰が決めた?普通って何?常識って何?ねぇ?ねぇ!?』
、、、言われてみれば確かにその通りだ。
『普通』や『常識』というものは、大概その当事者ではなく、周りが好き勝手都合の良いように決めたものなのだ。
次の選挙では、筆者は是非ともサカサナマズ氏に清き一票を投じたいと思う。
分類 | |
界 | 動物界 Animalia |
門 | 脊索動物門 Chordata |
亜門 | 脊椎動物亜門 Vertebrata |
網 | 条鰭綱 Actinopterygii |
目 | ナマズ目 Siluriformes |
科 | サカサナマズ科 Mochokidae |
属 | シノドンティス属 Synodontis |
種 | サカサナマズ S. nigriventris |
学名
Synodontis nigriventris (David, 1936) |
|
英名
Upside-down catfish |