『グッピーに始まりグッピーに終わる』
熱帯魚飼育において、『グッピー』という魚は、このように言われることがある。
比較的安価で丈夫で(飼いやすく)ひらひら舞い泳ぐ姿が非常に愛らしい彼らは、“入門種”として最適でありながら、
理想の1匹に出逢うため、多様な品種(体色やヒレの形)を遺伝学的に追求していけるといった奥深い“マニアック”な一面も合わせ持つ。
このようなことから、上記のような言葉が生まれたのだろう。
『グッピー』は、1850年頃にイギリスの植物学者「レクメア・グッピー」によって南米で発見された。
条鰭綱カダヤシ目カダヤシ科グッピー属に分類される魚類。
今回は、そんな彼らの、主に“生殖”について詳しく見ていこう。
1. 繁殖の容易さとデメリットについて
結論から言うと、『グッピー』の繁殖は実に簡単である。
ペットショップではオスとメスが、別々に売られており、それらをそれぞれ数匹ずつ購入し、水槽に放てば、特にこちらは何もせずとも繁殖行動が行われ、1ヶ月もすれば“ベイビー達”と対面できる。
個体によっては、一度に100匹近く産むこともあるのだ。
この繁殖のし易さも入門種たる所以であろう。
しかしながら、容易さに伴うデメリットも存在する。
それは、“奇形の出現”である。
狭い水槽という限られた中で、世代を重ねていくことにより、血縁が濃くなり過ぎてしまうのだ。
しばらく世代を重ねていくと、生まれつき骨格が曲がっており不自然な泳ぎ方をする『グッピー』の幼魚がちらほら見えてくる。
したがって、繁殖のさせ過ぎも問題と言えよう(しっかりとした管理が必要)。
2. 卵胎生メダカについて
まず1つ断っておかなければならないことは、『グッピー』は厳密に言うとメダカの種類ではない。
『グッピー』は上述の通りカダヤシ目に属するが、メダカはダツ目に分類される。
だが、これは割と最近になって判明した事実であり、それまでは彼らは近縁であるとされてきたのだ。
ということで、ここでは『グッピー』はメダカの類であるということにさせていただく。
そんなメダカの中でも『グッピー』は、「卵胎生メダカ」というものに該当する。
本来、普通のメダカを含む魚類は「卵生」であり、次世代を残すために水中に卵を産む。
しかしながら、『グッピー』のメスは卵をお腹の中に授かると、そのまま体内で育て、孵化する際に、既に“魚の姿をした赤ちゃん”を直接水中に産み落とすのだ。
この「卵胎生」という仕組みをとる魚類は他には、海水魚のカサゴ、メバルなどもいる。
3. 性的二形(せいてきにけい)について
「性的二形(sexual dimorphism : セクシュアル・ダイモーフィズム)」とは、『雌雄(オス・メス)の形質の違いが生殖器以外で、はっきり見られること』である。
まぁ、簡単に言うと、『パッと見た目だけで、オスとメスの違いが分かる』ということだ。
例)カブトムシ
大きなツノを持つ:オス
無い:メス
普通、魚類のみならず多くの動物において、パッと見た目だけでの雌雄の区別は難しいものだ。
しかし、『グッピー』のオスは、大きく鮮やかな色の尾ヒレを持ち、それをひらひら旗のように揺らしながら泳ぐ。
我々が『グッピー』と聞いてイメージするカラフルで優雅なものは、全てオスということだ。
オスはメスに比べ、身体のサイズは小さい(オス:体長3〜4cm)。
その反面、メスは大きい(メス:体長5〜6cm)が、尾ヒレは小さく、全体的に地味な体色をしている。
このように、『グッピー』は性的二形という特徴を持つので、オス・メスの違いがはっきりしており、判別が簡単なのだ。
おわりに
さて、上記のように『グッピー』は生殖の面で大変興味深いことが分かっていただけただろう。
実際に彼らの飼育を始めれば、その他のいろいろな魅力にも気付いていただけることだろう。
『グッピーに始まりグッピーに終わる』
さあ、今こそ『グッピー』飼育を始めよう!
分類 | |
界 | 動物界 Animalia |
門 | 脊索動物門 Chordata |
亜門 | 脊椎動物亜門 Vertebrata |
網 | 条鰭綱 Actinopterygii |
目 | カダヤシ目 Cyprinodontiformes |
科 | カダヤシ科 Poeciliidae |
属 | グッピー属 Poecilia |
種 | グッピー P. reticulata |
学名
Poecilia reticulata (Peters, 1859) |
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和名
グッピー |
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英名
Guppy |